■ 橋本賢次さん。



収穫直前の畑。まるでオバケが手を広げ列をなしているような枯れ姿は迫力満点。


畑の一年を締めくくる、野菜界の大物です。

勝平野のど真ん中。見渡す限りのでっかい畑も、11月始めとなれば休眠間近。
作物の姿を見かけることはほとんどありません。ここ帯広大正地区でも畑仕事は一段落、建設機械を使っての工事が行われています・・・。
と思いきや。なんと、ここが長いも畑。土木工事を思わせる大がかりな作業こそ、長いもの収穫そのものだったのでした。
「この機械はバックホーといって、実際に建設工事用のものなんですよ」。
額に汗して教えてくれた橋本賢次さん、ひと畝掘りあげ休むまもなくトラクターに飛び乗って、長いもの収穫に取りかかりました。
長いもの収穫は、まずバックホーで畝と畝の間に深さ1mほどの溝を掘り、側面の土の中から1本ずつ人手で抜き取っていくのです。「土の中のいもは柔らかく折れたり傷がつきやすいので作業はあくまで慎重に」とのことですが、みなさんの手の早いこと。溝の脇にはみるみる長いもが積まれていきます。
外気より土の中のほうが暖かいのでしょう、掘りたての長いもからほかほかと湯気が立ちのぼっています。思いがけない初々しい表情にハッとさせられてしまいました。



「今のは、長くて太くて特別にいいですね」。長いもづくり12年の橋本さんが、過去最高と胸を張る出来映え。天候に恵まれたとはいえ、この成果はみなさんの丹精の賜物です。なにしろ長いも栽培には多大な労力が必要。「小麦、ビート、いも、豆、スイートコーンと植えているけど、春早くから秋遅くまで一番手がかかる」作物なのです。
長いも畑の1年は、春3月、畑の整備から始まります。まずはいもがまっすぐに成長できるようトレンチャートという機械で、1m20cmの深さまで土をふかふかに耕します。
次に種いもの準備。長いもの土を落として150g単位の輪切りにし、20℃くらいの温度と湿度を与える皮の表面に芽が出てきます。芽が大豆粒くらいになったら、いよいよ植つけ。この芽がいもになるので、斜め下に向かうようにひとつひとつ手植えします。
さらに長いもはツル性植物で地上3mほどまで育つので、長い支柱をたて、ツルをからませて。夏の間はあまり手がかからないそうですが、10月に入れば収穫の準備。ツル切り、支柱抜き・・・、どれも機械化ができないため重労働の連続です。しかも収穫までに要する期間は、野菜の中で最長クラスの7ヶ月!
それだけに「今年のように掘れば大きいのがごろごろ出てくるとうれしいです。ただ豊作イコール収入には結びつかんけどね」。



堀りは11月中旬には終了しますが、畑の約3割には手をつけず、翌年4月の春堀り用に残しておくのが北海道流。霜に当たって葉が自然に枯れるまで地中で完熟させるのでアクが少なく、保存性が高いゆえにできるワザでありますが、年2回の収穫で通年出荷を行っているのです。そのワケが農協の貯蔵施設にもあると聞いて訪ねえてみました。
堀りあげられた長いもの落ち着き先は、温度3〜4℃に保たれた冷蔵保存庫。ここでいつもは土つきのまま芽を出すことなく保存され、毎日出荷される分だけが洗浄、選別、箱詰めされ全国津々浦々へ旅立っていきます。
私たちが訪ねたとき大勢の作業員さんの手で出荷作業が進められていたのは春掘りいも(11月下旬から秋掘りの新掘り新いもに切り変わります)。洗いあがりの見事な白さ!とても昨年産とは思えないみずみずしさでした。
「大正地区の土壌は、適度に粘りのある火山灰土なので、まっすぐ素直で、毛穴の少ない肌の白い長いもができるんです。北海道の主産地である。十勝の中でも研究熱心な農家が多く、他の地域に比べて"太もの"がとれることでも定評があります」。(JA帯広大正生産販売部次長・道下育さん)


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