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■ 中野幸廣さん



親のりん片1枚から生まれる子球は3〜4個。
5月上旬に、1個ずつに分けて畑に植えます。





摘蕾は夏一番の大仕事。生長芽をとめないよう慎重に、かつ手早く。花に養分を取らない固いつぼみのうつにもぎとります。

タネづくりから特別待遇。
エリートを育てています。

産量は日本一ながら、消費量では関西圏に遠く及ばない北海道。食用にしているのはゆりの「球根」とは知っていても、そこから先が???。大産地に暮らす私たちも、ゆり根についてほとんど知識がありません。
 まずは生長の過程を探ろう!ゆり根探検隊と化したスタッフは3月中旬、ホクレンの滝川種苗生産センターを訪ねました。
 センター内にある「ゆり根原種センター」では子球の育成の真最中。業務課の岡村博昭さんに案内されて増殖室にむかうと、入口の足もとには消毒液が張られています。
「そこに靴底を浸してから入ってください」。ここで育てているのはゆり根をつくるための、タネのそのまたタネ。余計な菌を持ち込まないよう細心の注意が払われているのです。
「ゆり根は病気に弱いのでウイルスフリー球(潜在的な病気をもっていない)を親に、無菌状態の倍土に植えて増殖させています」。



の上ほにずらりと並んだ育苗箱。倍土から小さなゆり根がいくつも顔をのぞかせています。試しにひとつ掘り出してもらうと・・・。
あっ、子どもはりん片からできるんですね!
「11月上旬に、親のゆり根のりん片を1枚ずつ折りとって消毒し、折り口を上にして倍土に植え込みます。で、室温を24〜19℃、湿度を90〜70%に保つと、折り口から子球が出てきて、半年後にはこうなります」。
 1枚のりん片にできる子球3〜4個。大きさにして大豆つぶ程度ながら、根の太くて長いこと。力強く生命力を感じる姿です。
 このあと畑に植えるのかと思えば、さにあらず。球根は一度寒さに当て冬を体感させないと芽が出ないので、室温を2〜0℃に下げ、このまま4月下旬まで休眠させるのだそう。



5月上旬。の休眠を終えた子球は、全道の委託農家さんのもとへ運ばれ、1球ずつ畑に植えられます。それも、ウイルスをを媒介するアブラムシなどから身を守るため、寒冷紗ハウスでの隔離栽培。まるでVIP待遇です。
 手厚い保護のもとゆりは芽を出し、7月下旬には草丈50cmほどに育ち、つぼみをつけます。でもこれを咲かせてしまっては水の泡。花に養分が取られ肝心の球根が大きくなれないので、1つ残らず摘み取ってしまいます。
「畑で花を見ることはまずないです。たま〜に摘み残しが咲いていることはありますが」。
 北海道で栽培されているのは大半が、野生のコオニユリから改良された「白銀」という品種。オレンジ色で濃紅色の斑点のある花が咲くそうです。ちなみに、気高い白ゆりは球根が苦しくてとても食用にならないとか。



10月に入れば、いよいよ堀り上げが始まりです。でも、子球はまだピンポン球くらいの大きさ。「これを産地に送って、さらに畑に植えると、翌年の10月にはおなじみのゆり根のサイズにまで育ちます」。それを出荷するのかと思えば、またまた、さにあらず。
 先ほどの、りん片をはがして子球を育てる、「増殖」の行程を産地でも繰り返し、できた子球が、ようやく市場に出回るゆり根のネタになるのです。(ふう、ややこしい・・・)
 つまり、ホクレンの過程ではタネののタネ、産地の施設でネタをつくって、それを農家の皆さんが畑に植える−。なんと、ここまで来るのに、もう4年半が経過しています。
「出荷用のゆり根のりん片をはがして畑に植える方法で作ることはできますが、何代もくり返すと親の性質がだんだんぼやけて、病気が出やすくなったり、小型化してしまって、生産が成り立たなくなるんです」。
 親のよいところを受け継いだ子供だけを選び確実に増やす。この作業が、北海道のゆり根栽培を足もとから支えているんですね。
 と、ここまででも十分に気の長いゆり根ですが、この先の道のりも平坦ではありません。次に産地を訪ねてみることにしましょう。


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