右から、タネになる子球。畑に植えて1年後にピンポン球大に。さらにもう1年後、順調に育つと150〜190gの大きさになります。





板に米袋用のひもを取りつけた根きり用の道具は、中野家のおばあちゃん考案?のオリジナル。サビをつけないための工夫です。
3年かけて、じっくり養成。
丹精の賜物です。


「今日が今年の初堀りなんだよ」。時は流れ9月上旬、他産地に先がけて収穫の始まった芦別市へ。額に玉の汗の中野幸廣さんが、作業の手を休めて話してくれました。
 ここは北海道の中でも歴史のあるゆり根産地。中野さんもお父さんの代から30年、この地でゆり根をつくり続けています。
 実はこれ、とてもすごいこと。ゆり根は極端に連作を嫌うので、一度植えた畑は10年は間をあけないとまた植えることはできません。養分がなくなるのと、連作障害が起こり病気になりやすくなるからで、広い土地が確保できる地でなくてはつくれない作物なのです。
「うちは水田もやってるので、5〜6年で畑をまわせるから、まだ楽なんですよ」。
 解説しますと・・・、連作障害を引き起こすフザリウム菌は水に弱い。で、ゆり根畑を翌年、水田にすると土は浄化されて、再びゆり根を育てる活力が早めに蘇るのだそうです。



大から、ピンポン球、そしておなじみの大きさへ。市場に出荷するゆり根(販売球といいます)も生長過程はタネと同じ。畑でふた夏、つぼみを摘んで球根をまるまると太らせ、3年目にして販売球に。しかも養成中の2年も同じ畑のままではダメ。秋に掘り起こしたら、すぐ洗浄・消毒して、新しい畑に植え替えなくては機嫌よく育たないのですから、まったく手間がかかります。
 水田との輪作で年数を短縮している中野さんですが、水田から畑に切り替える作業はまたひと苦労。排水溝を掘って水を抜き、1年目はえん麦を植え、2年目にえん麦をすきこんで縁肥にして休ませ、その翌年にようやく植えられる、と聞いて気が遠くなる思い。
「畑の準備も3年がかり。鬼が聞いたら、腹をかかえて笑うかもしれない(笑)」。



話を聞いているうちに、畑のゆり根は中野さんのご両親と息子さんの手で、みるみる堀りあげられていきます。土から顔を出したのは片手にあまるほどのビックサイズ。真っ白なりん片はふっくらと、それは見事な出来映えです。「3年間じわりじわり育ったものだから栄養価も高いよ、多分(笑)」。
 収穫の手順は、鍬で深めに掘り起こし、慎重に手で茎を抜き、根にひもを巻いてぶちっと切り取ります。「よそではテグスを使うようだけど、ばあさんは昔の人だから米袋の口を縫うひもでね」。何気なくやっているように見えて、さすがはベテラン、手つきが実にやわらかい。へたにさわると白い肌に赤いサビができて商品価値が落ちるので、作業は慎重に慎重を期して行われます。
 中野さん宅の収穫は1日完結型。夕方までに掘り取り・根切りを終えて、きれいに洗ったあと選別、予冷をかけて箱詰めまで行ってしまいます。このとき箱に一緒に詰めるのが、おがくず。これもゆり根に傷をつけないよう細かく挽いてもらっている特注品だそう。



には念を入れて生産・出荷されるのですから「高嶺の花」になるのも納得。産地ではまるごとホイル焼きにして塩をふって食べる、というのが人気のようですが、真っ盛りの旬こそそんな贅沢も試してみたいもの。
 和食のイメージが強いけれど、乳製品やマヨネーズとの相性も抜群。カレーやシチュー、グラタンに入れたり、さっとゆでてサラダにも。洋風メニューが意外にいけます。
 下ごしらえは、水洗いしたあと、底の芯のまわりを包丁でくり抜き、りん片を外側からはずします。ゆでる場合は塩少々を入れた熱湯で1〜2分でOK。水にさらすと旨味が抜けるので、ざるにあげて冷しましょう。
 ゆり根は収穫直後より、寒さが増すこれからが甘くなっておいしい。サビはないにこしたことはないけれど、味には影響ありません。ちょちょいと削ってフル活用してください。


ホクレン広報誌 GReen No.198 より



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